部門長
西村 明儒 教授
災害時の医療活動には、DMATに代表される負傷者に対する救急医療のみならず、避難生活中の健康管理や疾病の予防や治療、被災者のこころのケア、さらに被災死亡者に対する死体検案があります。災害医療は、災害時に人的物的資源が不足した状態の医療であり、医療者による十分な医療を行うことが困難な状態です。まず、トリアージを行い、重症度に応じた対応をする必要があります。そして医師や救急救命士が、赴いて迅速に対応することが困難な現場では、一般市民による活動が望まれ、心肺停止者に対する蘇生術の普及は、極めて重要と考えられます。
しかしながら、地震災害では、救命不可能な損傷を受けることが少なくなく、事前対策による予防が不可欠な場合もあります。事前対策、すなわち一次予防は、被災死亡者の死因分析なしでは行い得ません。そのためには、被災死亡者ひとりひとりの死因を調査しなければなりません。
災害で負傷した、家を失った、家族を失ったなどの心的外傷を被った際に心的外傷後ストレス障害(PTSD)で長く苦しむことがあります。PTSDは、心のケアを受けることによって予防できるので、被災早期から心のケアを受けることが望まれます。また、PTSDは、被災者のみならず、損壊や腐敗の著しい遺体に関わる家族や消防、警察、医療者などの職業救援者も発症することがあり、その様な人達に対するこころのケア体制の整備も重要な課題です。
キーワード:緊急医療体制、災害医療、被災者医療、衛生管理、トリアージ、死体検案、個人識別、家族支援、職業的救援者、こころのケア